こんにちは、内田裕之です。
内覧会の関係で、いらした方にコラージュ療法の体験をしてもらいました。久しぶりにコラージュに触れました。勘が鈍っていなくてよかったです。
この技法は、院生時代に教わりました。当時、愛知医科大学におられた森谷寛之先生が病棟に持って行けるポータブルな箱庭を考えていらして、コラージュに行き着いたそうです。
元々は芸術・美術の領域で用いられていた技法です。雑誌やパンフレットの画像を切り抜き、構図や配置を考えて、新しく作品にしてしまうていう手法です。
これが心理療法として、表現療法ないしは芸術療法として確立されていきました。私が習った当時は、森谷先生の個人的な勉強会、その後、東京や名古屋で実践している先生方が集まっての研究会、その後、学会にまで発展してきました。
独自の実践に取り組んでおられる先生の中には、雑誌やパンフレットのキャッチコピーの文字を切り抜いて、キャプションとして最後に貼り付けることをしてもらう先生もおられます。
あらかじめセラピストが切り抜きをしたパーツを用意しておくコラージュボックス法と、直接その場でクライエントに雑誌などを切り抜いてもらうマガジン法があります。マガジン法の場合、クライエントに気になる雑誌などを持参してもらうことで作品を作ることもします。
当室では、50分のセッション時間を考慮して、サイズはA4の画用紙で、ボックス法とマガジン法の折衷で行なっています。キャプションは強要はしませんが、もしできれば付けてもらうことにしています。
当室で心理療法としてコラージュ療法を行うことを決めて、私と石郷先生とで、雑誌やパンフレットの素材集めに奔走して一苦労しました。駅やお店を回ってパンフレットを集めたり、古本屋に行って雑誌を探したりして集めました。
集めるにあたって、私の念頭にはロールシャッハのコンテントレンジ、特に名大法を参考にしたり、箱庭で用いるアイテムのことを頭の片隅に置いたりして、集めていきました。まだ完全とは言えませんが、機能するくらいになりました。完全を求めること自体、無理なことですから。
箱庭の話をした時に、アイテムは私の手や心の延長であると書きました。コラージュも同様です。
ただ箱庭と違う点は、アイテムが1回限りだということ。それから、集めた雑誌などが劣化してしまうということです。文字通り、黄ばんだり皺になったりする物理的な劣化があります。それだけではなく、セラピストとしての私の心の中での劣化があります。
私は冷蔵庫をイメージします。私の心の中で、風味期限があるように思っています。
新鮮なネタで勝負する寿司職人をイメージしています。クライエントさんが「口にしたい」「食べたい」と思うネタを美味しく味わってもらえるように努力しています。そのために早朝から魚河岸に行く職人に学びたいものです。
また、美的な観点からすると、華道、生け花を連想します。美しいお花が器の中で調和して1つの作品になることをイメージしています。
元々は完成していたデザインや文脈から切り抜くことで、元々の文脈を破壊します。そして、貼り付けることで、クライエントさんの新しい文脈を構成してもらいます。
このクライエントさんの文脈を読み取ることがコラージュの醍醐味だと思っています。
ポップアートでよく用いる技法ゆえ、チープに見えるきらいがあります。しかし、クライエントさんの連想やイメージの膨らみが反映されてきます。異質なものは切り抜かないし、切り抜いても貼りません。貼り付ける人もいますが、本人は「なぜかわからない」「何となく」と言われます。今後の展開が期待される点になります。
ここで、精神分析の自由連想やユング派の拡充に思いを馳せると、クライエントさんにとっての文脈や意味が見えてきます。
こんな姿勢で当室ではコラージュ療法を行なっています。
関心のある方はどうぞご来談いただき、作品を作ってもらいたいと思います。