開室時間の変更(その5) 教育分析
2025年10月23日

内田裕之です。

当室では、教育分析も積極的に行っています。

心理療法に携わる方が自分の内面に触れることを経験しておかれることはお勧めします。
私自身、教育分析を受けて、他では得られない経験をしました。

心理療法家の基礎訓練として、自分がクライエントになることで、心理療法家がどのようにアプローチするのかの実地訓練にもなります。
あるいは、私が分析家から得たクライエントとの接し方から学べることもあるかもしれません。

私は深層心理学的アプローチをしています。
無意識を想定した心理療法です。
現代ではいささかすたれてしまった感じがします。
私からしたら、現代の心理職がいかに浅層心理学をしているか、を考えています。
症状の除去にばかり気を配り、背景にある問題が見えていないようでは、心理療法は進みません。
深層心理学も心理療法家の基礎訓練として必要な学習です。

まるで努力や心理職の援助さえあれば、すっきりと悩みが解消になると、万能感のある浅はかな理解が蔓延しています。
そのような扱われ方でどれだけクライエントさんが苦しんで、転院や転所をされていることか、小さなカウンセリングルームですが、世の中の動きがよく見えています。

クライエントさん本人も気づかないで暮らしている世界、忘れてしまっているが整理する必要のある世界、自分の意思・意志・意識だけではどうすることもできない世界、というその人の生活に邪魔を与えてくること、そして、一方、逆に、むしろクライエントさんに知恵・智慧・叡智・想像性・創造性を与えてくれる世界として、無意識を重視しています。

これは教育分析を体験しないとわからないことです。

心理療法家はもちろん、精神科医の方を歓迎します。
心を見る必要があるのに、心を見ていない治療者・援助者がたくさんおられます。その点で、医学部教育では足りなかったことを補うことができます。
特に病理学からだけではなく、発達という視点から患者さん・クライエントさんをとらえ直すことを伝えたいと考えています。
治すべき病理ではなく、発達していく可能性を読み取る力が養えます。
このことをご自身の心理的成長の中でつかんでもらえたら、幸いです。

自分の心の中で動いていることをしっかりと見て、「心とは何か?」を理解して、自分の整理をつけて、今後の自分の進むべき道を見出していってください。

心理療法とは、患者さん・クライエントさんの病んだ心を治すことではありません。

治療者・援助者が自分の心を使って、患者さん・クライエントさんの治療・援助をすることです。

投薬治療にかかりきりで、患者さんを大切にできていない若い医者(40代でもまだ若い)もたくさん見かけてきました。
それは、精神的・心理的なアプローチではなく、物理的なアプローチです。

昔のお医者さんは進んで教育分析を受ける方も多い時代でした。
この経験をしたお医者さんは、治療も上達していかれますし、身体科ではなく精神科を選んだ人生の意味を考えて、金銭的な面以外にも豊かな人生を歩んでおられました。

精神科では患者さんは1時間待たされて3分診療が一般的です。
しかし、教育分析を通して心を視野に入れられるお医者さんのもとでは、患者さんは長く待つけど(待たされた感じではなく、今日はこれから何を話そうと整理の時間になります)丁寧に5分、7〜8分、10分、15分と無理なく患者さんが満足できる診療ができるようになっていかれます。

ここでも厳しいことを言いました。
私の依って立つ考え方は、笠原嘉先生の小精神療法、中井久夫先生のアプローチ、精神分析では自我心理学、対象関係論、新フロイト派の考え方、イメージを大切にするユング派、あまり著名ではありませんがソンディの家族・一族を巡る考え方に強く影響を受けています。

こうした考え方を自分に照らして、じっくり自分の内面を見ていくアプローチを取っています。

こんな環境の中で、自分を見つめ直す時間、自分を深掘りする時間を持ってもらえたら幸いです。
きっと発見があると思います。
どうぞ休診されている曜日や夜の遅い時間帯に当室をご活用ください。