内田裕之です。
この前の記事の続きです。
あの時、うつのクライエントさんに伝えたことです。
自分への覚え書きでもあります。
私も意識して実践しています。
長年、腰痛で悩んでいた私の恩師がたくさんいろんな本を読んで教えてくださったこと、整形外科で私が腰痛のリハビリで注意されたこと、私がリラクゼーションとマインドフルネスで学んだことのハイブリッド型です。
参考になれば幸いです。
まず「立ち方」です。
立ってみましょう。
その時、シャンとする必要はないです。
どちらかというと、何も意識しない「いつもの」「普通の」自分の姿勢で立ってみてください。
そんな、小学校時代の「気をつけ」みたいに、脇を閉じて、指先をピンとする必要はないです。
足は閉じましょう。
ガニ股でなく、内股でなく、足先は真っ直ぐ前に向けてください。
肩の力を抜きましょう。
少し脇を空けてください。
腕もダランとさせて、腕の重みにまかせて肩の力をそのまま抜きましょう。
指先は、指を伸ばしてパーの形にするはなく、自然に緩んだ感じ。
そうです。そうです。
今度は、頭のてっぺんを意識して、つむじか、そのやや後ろ辺りから、足まで、一本の糸でつながっていて、上に引っ張られる感じ。
少し宙に浮いた感じがするとよいです。
あくまで「一本の糸」です。
「針金」や「筋金」ではありません。
意識していないと、全身がクニャッと曲がってしまう感じです。
つかめましたか?
そうです。そんな感じです。
肩から指先への力の抜けた感じはキープしてください。
顔の筋肉も緩めましょう!
別に笑う必要もないですし、怒ったり泣いたりしている時でもありません。
歯は噛みしめずにポカンとした感じにします。
唇は閉じましょうか。
歯もこめかみも眉毛も他、全部、顔を緩めてみましょう。
できましたか?
はい。この姿勢から「歩いて」みます。
目線は遠く、100メートル先を見て!
そう、そう。
自然と顎がいい角度になります。
うつむいたり、顎を上げたりしない感じです。
背中に意識を向けて、両方の肩甲骨を気持ち1センチずつ背骨に近づけてください。
自然と胸を張った状態になります。
猫背、鳩胸の人はよく意識してください。
「胸を張って!」とよく言われますが、そうすると、余計に猫背、鳩胸になる人、はたまたお腹が出てしまう人がいます。
今、いい感じになっていますよ。
その調子です。
では、動き出します。
足は、左右どちらからでもよいので、踵で地面を蹴って、つま先で着地します。
つま先は、足の指をパーにして、足の裏を意識します。
つま先という「点」ではなく、足をパーにした「面」でとらえてください。
こうしないと、膝を痛めたり、足の裏にマメやタコができたりします。
サッカー選手も足使いには気をつけていて、このパーにした指全体を意識しているそうです。
できましたか?
歩幅は自然なままでもいいです。
もう5センチ前に出ることを意識してもいいでしょう。
でも、無理せず、無理なく、自分なりの歩みを進めてみます。
欲張らなくて、いいです。
自分のテンポに合った歩幅がよいです。
ここまでできたら、ほぼほぼよしとします。
この「ほぼほぼ感」がほしいところ。
腕は自然に振りましょう。
筋肉で動かすのではなく、自然に、自然に。
ブランブランと腕が前後に振れるようにします。
そんなに難しくないでしょ?
え!?やっぱり難しいですか?
普段、猫背だったり、うつむきがちだったりする人は、後ろに引っ張られる感じがするかもしれません。
普段から、緊張気味で、怒り肩、鳩胸の人は、こういう緩んでいる感じに違和感があるかもしれません。
慣れていってください。
あるいは、お腹を出して歩いている人は、いずれ腰を痛めます。もしくは、腰痛でその歩き方になっているのかもしれません。
最初のうちは違和感を感じてしまうかもしれません。
騙されたと思って、今まで書いてきたことをやってみてください。
姿勢は大事です。
「物事に取り込む姿勢」という具合に、体の話をメタファーにした精神論があるくらいですから。
けっこう注文の多い話をしました。
最初から、一度に全部は体得できません。
ゆっくりいきましょう。
私も実践していますが、長時間の持続は難しいです。
少しずつ少しずつ、この歩き方が増えていけばよいのですから、焦らずにいきましょう。
でも、意識して、ゆっくり慌てず歩きます。
乱れたら、禅の和尚さんが坐禅中の修行僧の肩をピシャリと叩いてくれることをイメージして、姿勢を正しくリセットします。
何度でも失敗してください。
気にしないで、また一から始めればいいだけ。
誰も咎めていません。
ゆっくりやればいいです。
これは、ボディスキャンを経験されて、体の感覚がつかめるようになったことの応用だと思ってください。
歩いている時、無心になれると理想的ですが、これがまたなかなか難しい。
私は「マインドフル、マインドフル」とか日本語で「心がいっぱい、心がいっぱい」とか自分に言い聞かせたり、苦手なドイツ語やフランス語で数字を数えたりします。
苦手な外国語なら自然と歩くペースが落ちて、数え慣れてきたくらいで、自然なペースができています。
あとは、好きなアーティストの曲やクラシックの曲(バッハをよくイメージします)を鼻歌でも頭の中でも思い出しながら、歩きます。
何も急ぐことはありません。
ただの散歩の時間。
リフレッシュの時間。
されど散歩の時間。
ボディワークの時間。
誰かと競争しているわけでなし。
電車に駆け込む時でなし。
自分のための時間の過ごし方。
腰痛でお悩みの人には、腰への負担が減ります。
肩凝りのある人も緊張が解けます。
心の悩みのある方も、一旦、その困りごとから離れることができます。
一旦、一瞬でも、悩みごとから離れられると、段々、悩まされることから長く離れることが身についていきます。
そもそもマインドフルネスは、カバットジンという人が禅から心理療法の着想を得たものです。
禅僧は、坐禅だけでなく、立っても、歩いても、掃除する時も、食事でも、禅の修行をしています。
ちょっとそれを見習っただけの話です。
不思議なことに、自信が持てるようになる人もあります。
胸を張って歩くからか、自分のテンポで歩いて納得がいくようになるからか…
不思議ですね。
少しずつでも、少しでも多く、着実に、心の安寧が生まれてきますように。
そうそう、この前の記事に書いたクライエントさん、この姿勢と歩き方の話をして、実践してもらったら、かなり落ち着いてこられました。
ボディスキャンをやった意味も、ようやく再確認できたそうです。
それまでは寝転んで、こんなことをして、自分のうつの苦しみに何の意味があるのか、と思っていたのがようやくわかったと言われました。
鳥のさえずり、車の音、遮断機の音など、耳を澄まして、今まであまり意識していなかった音が聞けるように余裕ができてきたとのこと。
それまでは、うつの自分を鍛える気持ちだったそうです。周りには目がいかず、ジリジリ、イライラ、モヤモヤしていたとおっしゃっていました。
ちょっと疲れたら、公園のベンチに座って、よく会う子どもさんを連れたお母さんと挨拶をするようになったとのこと。
私はそんな話を聞いて、うれしくて顔が緩みました。
私までリラクゼーションでした。