内田裕之です。
研究室を撤収した時に、特別に大事にしている本は別に分けていたはずが箱詰め作業しながら、見つかりませんでした。
クロッパーら著『ロールシャッハ・テクニック入門』という本です。
もうボロボロになるまで、線を引いたり書き込んだりして、カバーは散逸、裏表紙は外れてガムテープを貼っていました。
私が大学院に入って最初に買った本でもあり、思い入れのある本でした。
もしかしたら、まだ開けていない段ボールの中に眠っているかもしれません。
とはいえ、諦めの気持ちが強く、古本屋サイトで探しました。
もう絶版の本です。
出版社が心理学にあまり関係のないビジネス書などを扱う会社だったことも大きいです。
一万円越えを覚悟して探しました。
すると、お手頃価格で、状態のよいものが手に入りました。
表紙のデザインってこんなのだったと思い返して感慨深かったです。
中身も、所々、鉛筆で線が引いてあるだけで、読み返しつつ消しゴムで消しています。
なので、ゆっくりペースで読み返していくと、クロッパーの偉大さが改めて感じられました。
ちなみにクロッパーはユング派の分析家で、アメリカに亡命したUCLAの教授でした。
まだ未整理だったロールシャッハテストを再構築する一方で、知覚などの基礎心理系アカデミズムにも、精神科医にも理解や協力を得ている人でした。
すごい人です。
日本人が書いたテキストとは訳が違います。
内容の濃さ、多様な視点。
私はこの本のおかげで、基礎系の心理学の先生や哲学、文学、人類学を専攻する友人と仲良くさせていただいたのだなあ、と思いました。
この本が絶版であるように、クロッパー法も廃れています。
でも、私はクロッパー法を捨てません。
クロッパー法から学んだものを後世に伝えたいです。
そんな決意表明をしたくなった瞬間でした。